こんにちは。おうち購入研究所のFP、藤沢です。
住宅購入のご相談を受けていると、このようなご質問をいただくことがよくあります。
「住宅ローンを組んだら、資産運用は一旦やめた方がいいのでしょうか?」
「住宅ローンを返済しながら、新NISAを続けても大丈夫ですか?」
「繰上返済を優先した方が安心ですよね?」
住宅購入は、人生で最も大きな買い物の一つです。
だからこそ、多くの方が住宅ローンを抱えた状態で資産運用を続けることに不安を感じます。
しかし、FPとして数多くの住宅購入やライフプランに携わってきた中で感じるのは、「住宅ローンを返済すること」と「資産運用をすること」は、どちらか一方を選ぶものではないということです。
むしろ、住宅購入後こそ家計全体を見渡しながら、お金を育てていく視点が大切になります。
今回は、なぜ住宅購入と資産運用をセットで考える必要があるのか、ライフプランという視点からお話しします。
住宅購入はゴールではなく、新しい生活のスタート
家を建てることや購入することを、人生のゴールのように考えてしまう方も少なくありません。
もちろん、念願のマイホームを手に入れることは大きな夢です。
しかし、本当に大切なのは「家を買うこと」ではなく、家を買った後も安心して暮らし続けられることです。
住宅を購入した後には、次のようなさまざまなお金が必要になります。
- 毎月の住宅ローン返済
- 固定資産税
- 火災保険や地震保険
- 住宅のメンテナンス費用
- 子どもの教育費
- 車の買い替え費用
- 老後資金
住宅購入は、人生のお金の流れが大きく変わるタイミングです。
だからこそ、住宅ローンの返済額だけを見るのではなく、将来の家計全体を考える必要があります。
住宅ローンは「負債」、資産運用は「将来の資産」
住宅ローンを組むということは、多くの場合、数千万円の借入をするということです。
例えば4,000万円の住宅ローンを組めば、その時点では4,000万円の負債を抱えることになります。
もちろん、その代わりに住宅という大切な資産を手に入れます。
しかし、マイホームは毎月収益を生み出してくれる資産ではありません。
家族が安心して暮らすための資産であり、日々の生活を支える大切な存在です。
一方で、資産運用は将来のお金を育てるための仕組みです。
毎月少しずつ積み立てることで、次のような将来のお金を準備できる可能性があります。
- 子どもの教育費
- 夫婦の老後資金
- 住宅のリフォーム費用
- 車の買い替え費用
- 万が一に備える予備資金
住宅ローンを返済することと、資産運用を続けることでは、それぞれ役割が異なります。
住宅ローンの返済は、毎月の支払いを続けながら住宅という資産を自分たちのものにしていくものです。
一方、資産運用は、教育費や老後資金など将来必要になるお金を準備するために行うものです。
どちらも、家族の将来の安心をつくるために必要なお金の使い方なのです。
「繰上返済が正解」とは限らない時代になっている
以前は、「余裕ができたら住宅ローンは繰上返済しましょう」という考え方が一般的でした。
もちろん、住宅ローンの借入残高を減らすことには大きなメリットがあります。
繰上返済によって元金が減れば、将来支払う利息を減らすことができ、住宅ローンの完済時期を早めることもできます。
住宅ローンを早く返済できれば、精神的な安心にもつながるでしょう。
しかし、すべての家庭にとって、繰上返済を最優先にすることが正解とは限りません。
住宅ローンの金利や住宅ローン控除の適用状況、手元に残っている預貯金、子どもの年齢などによって、適切な判断は変わります。
例えば、次のような状況で考えてみましょう。
- 比較的低い金利で住宅ローンを借りている
- 住宅ローン控除を受けている
- 子どもの教育費がこれから増えていく
- 手元の預貯金がそれほど多くない
- 将来の老後資金をまだ準備できていない
このような家庭が、手元にあるお金をすべて繰上返済に回してしまうと、住宅ローン残高は減っても、急な支出に対応できる現金が少なくなる可能性があります。
さらに、教育費や老後資金の準備が遅れてしまうことも考えられます。
一度住宅ローンの繰上返済に使ったお金は、基本的にはすぐに現金として取り戻すことができません。
そのため、住宅ローンを減らすことだけではなく、手元にどれくらいのお金を残しておくべきかという視点も大切です。
繰上返済と資産運用は数字で比較する
繰上返済と資産運用のどちらを優先するかを考える際は、感覚だけで判断しないことが重要です。
例えば、住宅ローン金利が年1%前後で、長期積立投資を20年から30年続けることができる場合を考えます。
長期的な資産運用の結果が住宅ローン金利を上回れば、手元資金をすべて繰上返済に回すよりも、一部を資産運用へ回した方が、将来の資産を増やせる可能性があります。
ただし、資産運用には元本割れのリスクがあります。
住宅ローン金利は契約条件に基づいて支払う必要がありますが、資産運用の利益は保証されていません。
そのため、単純に「住宅ローン金利より運用利回りの方が高そうだから、資産運用を優先すればいい」と考えるのは危険です。
比較するときには、次のような項目を確認する必要があります。
- 住宅ローンの金利
- 変動金利か固定金利か
- 住宅ローン控除の残り期間
- 現在の預貯金額
- 今後必要になる教育費
- 老後までの期間
- 毎月継続できる積立金額
- 価格変動に対するリスク許容度
家族構成や収入、貯蓄額、金利、リスク許容度によって、最適な答えは変わります。
だからこそ重要なのは、「何となく繰上返済をする」「余ったお金を何となく投資する」のではなく、ライフプランの数字を基に比較することです。
インフレ時代は「預金だけ」では資産価値が目減りする可能性がある
ここ数年で、私たちの生活を取り巻く物価は大きく変化しています。
スーパーへ行けば食品の価格が上がり、ガソリン代や電気代も以前より高くなっています。
住宅業界でも、次のような費用が上昇しています。
- 木材価格
- 建築資材
- 住宅設備
- 運送費
- 人件費
その結果、数年前と比べて住宅価格そのものも高くなっています。
物価が上がるということは、同じ金額で購入できるものが少なくなるということです。
例えば、100万円を銀行口座に預けていれば、通帳に記載されている金額は100万円のままです。
しかし、物価が上昇すると、その100万円で購入できる商品やサービスの量は少しずつ減っていく可能性があります。
つまり、金額は変わっていなくても、お金の実質的な価値が下がる可能性があるということです。
そのため、これからの時代は「貯める」という考え方だけではなく、長期的にお金を育てるという考え方も必要になります。
住宅購入後も預貯金は必要
資産運用が必要だからといって、預貯金をすべて投資に回していいわけではありません。
住宅購入後は、想定していなかった支出が発生することがあります。
例えば、次のような費用です。
- 引っ越し費用
- 家具や家電の購入費用
- 外構工事の追加費用
- 固定資産税
- 住宅設備の修理費用
- 病気やケガによる収入減少
- 車の故障や買い替え
こうした支出が発生したときに、預貯金がほとんどなければ、資産運用している商品を不利なタイミングで売却しなければならない可能性があります。
そのため、まずは生活防衛資金を確保することが大切です。
必要な生活防衛資金の金額は、共働きか一馬力か、会社員か自営業か、子どもの人数などによって異なります。
資産運用を始める前に、万が一のときにも家計を維持できる預貯金を確保しておきましょう。
新NISAは住宅購入後の資産形成にも活用できる
2024年から始まった新NISAは、長期で資産形成を考える方にとって活用しやすい制度です。
「住宅ローンがあるから投資はまだ早い」と考える方もいますが、住宅ローンと新NISAは必ずしも対立するものではありません。
住宅ローンの返済を続けながらでも、ライフプランの中で無理なく継続できる金額を確認した上で、新NISAを活用することは可能です。
例えば、毎月の積立金額として次のような金額を検討する家庭もあります。
- 毎月1万円
- 毎月3万円
- 毎月5万円
一度に大きな金額を投資しなくても、毎月一定額を長期間積み立てることで、将来の教育費や老後資金づくりにつながる可能性があります。
大切なのは、NISAの非課税枠をすべて使うことではありません。
家計に無理のない金額を設定し、住宅ローンや教育費の支払いが増えても継続できるようにしておくことです。
資産運用は「長期・積立・分散」が基本
住宅購入後の資産形成では、短期間で大きな利益を狙うのではなく、長期・積立・分散を基本に考えることが大切です。
長期
資産運用は、短期間では価格が大きく上下することがあります。
しかし、10年、20年、30年という長い期間で考えることで、短期的な価格変動の影響を抑えながら資産形成を続けやすくなります。
積立
毎月一定額を積み立てることで、価格が高いときには少なく、価格が低いときには多く購入することになります。
投資するタイミングを一度に決める必要がないため、投資初心者の方でも取り組みやすい方法です。
分散
一つの会社や一つの国だけに投資すると、その会社や国の状況によって資産全体が大きく影響を受ける可能性があります。
複数の国や企業、資産へ分散することで、特定の投資先に依存するリスクを抑えやすくなります。
ただし、長期・積立・分散を行ったとしても、利益が保証されるわけではありません。
資産運用には価格変動があることを理解し、無理のない範囲で続けることが重要です。
住宅ローン返済と資産運用は十分に両立できる
「住宅ローンがあるのに投資をするのは危険ではありませんか?」
この質問もよくいただきます。
確かに、生活費や近い将来に使う予定のお金まで投資へ回してしまうことはおすすめできません。
しかし、次のような条件が整っていれば、住宅ローンを返済しながら資産形成を進めることは十分可能です。
- 生活防衛資金を確保している
- 毎月の家計に余裕がある
- 教育費など近い将来に使うお金を分けている
- ライフプランで将来の家計を確認している
- 長期間継続できる金額を設定している
実際、多くのご家庭では、住宅ローン返済と資産運用を無理なく両立されています。
大切なのは「今月はいくら投資できるか」ではありません。
10年後、20年後も続けられる金額はいくらなのかという視点です。
教育費が増える時期まで考えて積立額を決める
住宅購入を検討する世帯の多くは、子育て世帯です。
子どもが小さい間は比較的家計に余裕があっても、中学校、高校、大学と進学するにつれて教育費の負担が増えることがあります。
現在の家計だけを見て、「毎月5万円なら積み立てられる」と判断しても、教育費が増える時期に継続できなくなる可能性があります。
そのため、資産運用の積立額は現在の余裕資金だけで決めるのではなく、将来の教育費も確認した上で決めることが大切です。
例えば、ライフプランを作成すると、次のような判断ができるようになります。
- 子どもが小さい10年間は積立額を増やす
- 大学進学時には積立額を一時的に減らす
- 教育費が終わった後に老後資金の積立額を増やす
- 児童手当の一部を教育費として積み立てる
資産運用は、同じ金額を一生続けなければならないものではありません。
家族の状況や家計の変化に合わせて、積立額を見直すことも必要です。
住宅の修繕費も忘れてはいけない
住宅購入後のお金を考える際、住宅ローンの返済ばかりに目が向き、将来の修繕費が抜けてしまうことがあります。
住宅は、購入して終わりではありません。
長く暮らしていく中で、外壁や屋根、給湯器、水回り設備などのメンテナンスや交換が必要になります。
修繕が必要になる時期や金額は、住宅の構造や使用している設備、メンテナンス状況によって異なります。
しかし、ある程度まとまった金額が必要になる可能性は考えておかなければなりません。
将来の修繕費をすべて住宅ローンの繰上返済に使ってしまうと、修繕が必要になったときに新たな借入が必要になることもあります。
住宅ローンを早く減らすことだけではなく、住宅を維持するためのお金を計画的に準備することも重要です。
ライフプランがあるから住宅ローンも資産運用も迷わない
おうち購入研究所では、住宅ローンだけを見て判断することはありません。
住宅ローンを組む前に、次のような項目を含めたライフプランを作成します。
- 教育費はいつ増えるのか
- 車をいつ買い替えるのか
- 住宅の修繕費はいくら必要になるのか
- 老後資金はいくら必要なのか
- ご夫婦が何歳まで働くのか
- 今後の収入はどのように変化するのか
- 住宅ローン金利が上昇した場合に返済を続けられるか
ライフプランを作ることで、将来のお金の流れを数字で確認できるようになります。
例えば、次のような判断ができるようになります。
- 毎月3万円なら積立投資を続けられる
- 教育費が増えるまでの10年間は積立額を増やせる
- 住宅ローンを500万円少なく借りた方が将来は安心できる
- 現時点では繰上返済をせず、手元資金を残した方がよい
- 住宅ローン控除が終わってから繰上返済を検討する
住宅ローンをいくら借りるのか。
資産運用へ毎月いくら回すのか。
繰上返済をいつ行うのか。
これらは別々の問題ではありません。
家計全体のライフプランを作ることで、それぞれのバランスが見えてきます。
資産運用は「余ったお金でするもの」ではない
資産運用について、「毎月余ったお金があれば投資します」と考えている方も少なくありません。
しかし、毎月の生活費や娯楽費を使った後に残ったお金だけを積み立てようとすると、積立額が安定せず、長く続けにくくなります。
資産運用は、単に余ったお金でするものではありません。
住宅ローン、教育費、老後資金、住宅修繕費などを含めたライフプランを作成し、その中で無理なく続けられる金額を決めることが重要です。
家計の中で資産運用の金額をあらかじめ決めておくことで、将来のお金を計画的に準備しやすくなります。
ただし、積立を優先しすぎて現在の生活が苦しくなっては意味がありません。
家族で旅行をしたり、子どもとの時間を楽しんだりすることも、人生にとって大切です。
将来のために備えながら、現在の暮らしも大切にできる金額を設定しましょう。
FPとして一番伝えたいこと
住宅購入をすると、多くの方は住宅ローンの返済ばかりを気にされます。
もちろん、無理なく住宅ローンを返済できることはとても大切です。
しかし、本当に大切なのは、住宅ローンを完済することだけではありません。
家を購入した後も、子どもが進学し、家族で旅行へ行き、住宅をメンテナンスし、老後も安心して暮らせること。
そこまで含めて考えることが、本当の意味での住宅購入だと私は考えています。
住宅ローン、教育費、老後資金、資産運用。
これらはすべて別々に考えるものではなく、一つのライフプランとして考えるべきものです。
その結果、「今いくら借りても大丈夫なのか」「どれくらい資産運用に回せるのか」「繰上返済はいつ行うべきなのか」が明確になります。
将来の不安を減らすためには、感覚だけで判断するのではなく、数字で家計を把握することが何より重要です。
まとめ
住宅購入後も、将来に向けた資産形成はとても重要です。
- 住宅ローンと資産運用は対立するものではありません。
- 繰上返済がすべての家庭にとって正解とは限りません。
- 繰上返済と資産運用は、家計全体の数字を基に比較する必要があります。
- インフレ時代は、預金だけではお金の実質的な価値が目減りする可能性があります。
- 新NISAなどを活用し、長期・積立・分散を基本に資産形成を続けることが大切です。
- 投資を始める前に、生活防衛資金を確保しておく必要があります。
- 教育費や住宅修繕費まで含めて、無理なく続けられる積立額を決めることが重要です。
- ライフプランを基に、住宅ローン・預貯金・資産運用のバランスを考える必要があります。
住宅購入はゴールではなく、新しい人生のスタートです。
その先も安心して暮らし続けるためには、「家を買うこと」だけでなく、家を買った後のお金まで考えておく必要があります。
おうち購入研究所では、住宅購入の予算づくりだけでなく、住宅ローン・教育費・資産形成・老後資金まで含めたライフプランをご提案しています。
「住宅ローンを組みながら資産運用も続けたい」
「繰上返済と新NISAのどちらを優先すればいいのか知りたい」
「家を買った後も安心できる家計をつくりたい」
そのようなお悩みをお持ちの方は、ぜひお気軽にご相談ください。
住宅購入だけではなく、その先の人生まで見据えたライフプランを一緒に考えていきましょう。
おうち購入研究所 北陸担当FP 藤沢

